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IWMS/FMソリューション「ARCHIBUS」コラム

スマートシティが実現するとどうなる?スマートシティの先進事例を紹介!

2023年2月20日

「スマートシティ」という言葉を耳にしたことがありますか。日本では自動車メーカーのトヨタが積極的に取り組んでいることから、ご存知の方も多いでしょう。
しかし、スマートシティが実際に実現すると、生活にどのような影響があるのかご存じでしょうか。具体的にイメージできると、スマートシティはもっと身近なものとなります。
今回は、スマートシティが実現した場合の影響と、日本国内、そして海外でのスマートシティ実現への具体的な取り組み事例について取り上げます。

スマートシティが実現するとどうなる?

スマートシティとは内閣府の定義によると「先進的技術の活用により、都市や地域の機能やサービスを効率化・高度化し、各種の課題の解決を図るとともに、快適性や利便性を含めた新たな価値を創出する取組であり、Society 5.0の先行的な実現の場である」とされています。
スマートシティでは、ICT(情報通信技術)を活用することで、新たな産業の創出と育成、エネルギーの効率的な利用と供給、AIやカメラ技術を使った防犯体制と治安の維持、ドローンやロボットもしくはネットによる遠隔での高齢者ケア、交通渋滞の解消、災害対策などを実現できます。
これまでの都市計画と決定的に異なることは、時代や環境の変化に対しても柔軟に対応できることです。
従来は、建物や道路、施設などハードウェアが前提となっていたため、都市機能を変えることは容易ではありませんでした。しかしICTを活用するスマートシティの場合、その心配は不要といえるでしょう。
以上のように、スマートシティは多くの社会問題や課題を解決できると期待されています。

スマートシティが実現するとどうなる?

国内におけるスマートシティの先進事例

日本の国内におけるスマートシティの先進事例を8つ見ていきましょう。

北海道札幌市「DATA-SMART CITY SAPPORO」

ICT活用戦略の一環としてイノベーション・プロジェクトが推進されている北海道札幌市。
データ活用によるイノベーション創出を目的とし、現在の都市課題を解消することと、新たな価値創造が期待されています。そして、プロジェクトの中核となるのが「DATA-SMART CITY SAPPORO」です。
DATA-SMART CITYSAPPOROとは、官民が持つデータを協調利用するための連携基盤のことを指し、データの登録、管理、提供やアカウント管理の機能を完備しています。
区別人口データと生活関連データを掛け合わせたマップ、動植物マップ、感染症の感染者数のデータなどのオープンデータがWebサイトで公開され、データ活用や市民への情報公開が進んでいる事例といえます。

福島県会津若松市「スマートシティ会津若松」

「スマートシティ会津若松」は、2011年3月11日の東日本大震災を受けた復興プロジェクトの一環としてスタートしました。
「産業振興による地域活力の向上」「安心して快適に生活できるまちづくり」「まちを見える化」の3つの視点で、まちづくりが進められています。
市民向けに、アプリ「あいづっこプラス」や、Webサイト「会津若松+(プラス)」などにより、情報を提供しているのも特徴です。
現在では、会津若松市を「全国の先端を行く地方創生のモデル都市」とすることを目標に、スマートシティ領域における連携協定をオランダのアムステルダム市と結んだり、全国からデジタル活用の実証事業を誘致するなどの取り組みも行っています。

千葉県柏市「柏の葉スマートシティ」

千葉県柏市の「柏の葉スマートシティ」は、柏市、三井不動産、柏の葉アーバンデザインセンターが幹事を務める「柏の葉スマートシティコンソーシアム」により推進されています。
プロジェクトにおけるテーマは、「環境共生都市」「新産業創造都市」「健康長寿都市」の3つ。公・民・学が連携することで、横断的に活用できるオープンなデータプラットフォームづくりを目標としています。
柏の葉キャンパス駅を中心として、半径2km圏に大学や病院、商業施設などを集め、人・モノ・情報を集約。駅周辺にデータが集まるようになり、データの収集と連携が強化されました。
収集されたデータは、公・民・学が連携してデータ駆動型の地域運営に活用されています。

東京都渋谷市「スマートシティ」

東京都渋谷区が掲げるスマートシティの基本方針は、区民一人ひとりの幸福・心の豊かさの向上、多様性に溢れた独自の街を目指すことです。
産官学民連携によるサービスで取り組まれている事例として、高齢者デジタルデバイド(情報格差)解消事業があげられます。
2021年9月より、高齢者へのデジタル機器の無料貸与(2年間)をはじめ、スマホの使い方講習会、コールセンター設置、有志の区民によるデジタル活用支援員の育成などを実施しています。
このサービスにより、高齢者のデジタルデバイドを解消し、健康増進及び安全安心の確保、生活の質の向上を目指しています。

静岡県裾野市「ウーブン・シティ」

2021年2月から工事が開始された「ウーブン・シティ」と呼ばれる実験都市は、トヨタが主導・開発するプロジェクトです。
都市名の「コネクティッド・シティ」は、網の目のような道が織りなす街の姿を名前の由来としています。初期段階では、トヨタ従業員やプロジェクト関係者をはじめ、2,000人程度の生活が想定されています。
この都市は、自動運転、MaaS、パーソナルモビリティ、ロボット、スマートホーム技術、人工知能(AI)など、これからの暮らしを支えるあらゆる技術を導入・検証できる実証都市であり、実際に人々が生活を送る環境のもとで作られることが特徴です。
トヨタは、ウーブン・シティで開発と実証を迅速に繰り返していくことで、新たな価値やビジネスモデルの創出を狙いとしています。

兵庫県加古川市「加古川スマートシティプロジェクト」

兵庫県加古川市では都市の安全・安心を中心とする、ICTを活用した事業「加古川スマートシティプロジェクト」を推進しています。
プロジェクトの目的は、市民の満足度や生活の質向上、地域課題の解決を図り、「子育て世代に選ばれるまち」を実現することです。
また、加古川市では、複数分野におけるデータの収集と分析ができるプラットフォームの整備、多様な人々が参加できる取り組み体制の構築を目指しており、安全・安心のまちづくりにかかわるデータを活用したスマートシティのあり方を推進しています。
収集したオープンデータは、行政情報ダッシュボードや行政情報アプリ「かこがわアプリ」などで活用されているようです。

香川県高松市「スマートシティたかまつ」

香川県高松市の「スマートシティたかまつ」は、産学民官が連携し、ICTを活用した地域課題の解決、地域経済の活性化を推進しています。
官民がそれぞれ所有するリアルタイムのデータが「IoT共通プラットフォーム」に集約され、分野横断的な利用が可能となり、行政の効率化を実現。
現在、IoT共通プラットフォームには、水位センサと潮位センサからのデータ、レンタサイクルの移動履歴データ、高齢者の呼吸や心拍等のバイタル情報などが収集されています。
防災、観光、福祉の面で、データを利活用した地域問題の解決が進められているのです。

福岡県福岡市「FUKUOKA Smart EAST」

アジアからの観光客も多い福岡県福岡市は、空港から都心までが近く、もともとコンパクトな都市として評価されていました。
福岡市では「FUKUOKA Smart EAST」と呼ばれるプロジェクトを2016年から開始し、自動運転や電動キックボード導入の実証実験を進めています。
さらに、LINEの子会社であるLINE Fukuokaが、福岡市のスマートシティ化に参画しており、公共交通機関などのLINE公式アカウントから、道路の混雑状況を確認できる機能をリリース。渋滞問題の解決、緩和を推進しています。

スマートシティが実現するとどうなる?

海外におけるスマートシティの先進事例

続いては、海外における事例を紹介します。

サンフランシスコ「DataSF」

カリフォルニア州のサンフランシスコは、データの可視化とオープン化により、都市部のデータをスマートシティへつなげる試みをしています。
さらに、公共サービスを向上させるため、「DataSF」とよばれるサービスで行政情報のデータを無償提供。
「DataSF」が保有するデータは、地理インフラ、治安など住民の生活に欠かせない大事な情報ばかりです。オープンデータ発信により、市民生活の質向上、効率的なサービス提供、新規ビジネス創出へつなげています。
データは、文化財の保護や地価評価など行政活動に活かし、そのほか市内のビルの3次元地図、住宅政策とデータ、土地情報などのアプリ開発にも役立てられています。

シカゴ「Array of Things」

シカゴが取り組む「Array of Things」は、IoTを活用したスマートシティプロジェクトで、全米で最初の取り組みとされています。
2015年にスタートした「Array of Things」は、都市環境やインフラなどについてのリアルタイムデータを収集する、ネットワーク化された試みです。
プログラムが可能なセンサを組み込んだ装置を街中に設置することで、天気や大気、ノイズといった都市環境データをリアルタイムで収集が可能。「Array of Things」によって公開されるデータは、大気汚染やヒートアイランド現象、騒音、渋滞などさまざまな問題への解決に役立てられようとしています。

シンガポール「Smart Nation」

シンガポールは「Smart Nation」、つまりスマート国家の実現を目指しています。そのためICT技術を積極的に導入し、首相府には「Smart Nation Program Office」を新設。
「国家センサネットワークの設置」「国家デジタル身分証システムの構築」「デジタル決済の普及」の3つが優先して進められています。
国家センサネットワーク設置とは、街中に監視カメラやセンサを多数設置し、交通、気象やインフラの状況などの各種データを収集することで、便利で安全な公共サービスを目指すものです。これらのデータは、ポータルサイトなどで国民にも公開されています。
国家デジタル身分証明システムの構築では、法人向けの身分証明番号サービスの新設などが進められています。
デジタル決済の分野では、2017年に携帯電話番号、あるいは身分証明番号のみで銀行口座間の送金が可能になるモバイル送金サービス「PayNow」を開始。
他行への送金も無料で即時行え、QRコードでの送金サービスにも対応。永住権取得者や国内居住外国人も使用できます。

トロント「Sidewalk Toronto」

カナダのトロントでは、「Sidewalk Toronto」というプロジェクトが推進されています。
「Sidewalk Toronto」は、住民の行動データなどを収集し、それらをもとに環境や暮らしをアップデートしていくものです。
あらゆる場所で人・モノの動きをセンサで把握しビッグデータを活用した街づくりを目指す一方で、収集したデータの利活用、住民のプライバシー問題などをめぐり議論も繰り広げられています。

ニューヨーク「NYC Open Data」「LinkNYC」など

スマートシティ先進地域であるニューヨークでは、さまざまなプロジェクトが進行しています。ニューヨークでは、オープンデータ法が制定され、市民によるデータ活用を後押ししています。
市民に公開されている「NYCOpenData」が提供するデータセットは、1,600超。行政もデータ活用に積極的で、市役所にデータナリストなどから成るデータ解析室を設置しました。
「LinkNYC」は、既存の公衆電話をWi-Fiのホットスポットへ変えるプロジェクトです。
使用頻度が下がり、老朽化も進む公衆電話をLinkと呼ばれる情報端末へと置き換え、無料のWi-Fiを提供するホットスポットとなるのです。

マンチェスター「CityVerve」

イギリスのマンチェスターは、2025年までに世界のスマートシティTop20に入ることを目標に掲げています。
「CityVerve」プロジェクトでは、2015年〜2017年に「医療・健康」「輸送・交通」「エネルギー・環境」「文化・コミュニティ」の4領域の実証実験が行われました。
医療・健康分野では、バイオメトリックセンサネットワークを活用した呼吸器疾患を抱える人の健康向上への貢献、運動や活動の状況を利用者に提供することで、運動を推奨しました。
輸送・交通分野では、センサ、電子看板、アプリを組み合わせ、利用客が待っていることを運転手に伝える「Talkative bus tops」を設置。ほかには、IoT無線タグを付けた安価な自転車シェアリングを推進しました。
エネルギー・環境では、IoTタグを街中の設備につけて大気質を把握し、そのほかスマート街灯を導入。文化・コミュニティでは、Wi-Fiホットスポットを設置し、文化イベントの情報にアクセスできるようになりました。

ドバイ「Smart Dubai 2021」

UAE第2の中心都市であるドバイでは、世界一のスマートシティを目指して「Smart Dubai 2021」というプロジェクトが進められています。
24時間365日、行政サービスが利用可能となっており、公共サービスにおけるペーパーレス化も実現しようとしています。
また、先端技術の活用も積極的に行われており、ブロックチェーン技術による公共サービスの支払いや、スマートモビリティ戦略も立案されています。
複数の自動運転車の検討を進めており、2018年からドバイ市内でテスト走行もスタート。それ以外にも自動飛行するマルチコプターを使った「空中タクシー」、時速1,220kmで進む「Hyperloop」の採用も検討されています。
また、防犯部分では自動運転車「O-R3」をパトカーに導入。自動運転パトカーは、100m先の物体も認識可能で、容疑者を検知したら、追跡します。

杭州「ETシティブレイン計画」

中国では、民間企業のアリババがスマートシティの担当企業となっています。アリババが提供する「ETブレイン」は、都市や環境、社会格差の問題を解決するための総合的なAIプラットフォームです。
そのプラットフォームを使用して進められているのが、杭州の「ETシティブレイン計画」です。道路のライブカメラ映像をAIがリアルタイムに分析し、状況に応じたさまざまな対応を自動化させています。
交通状況に応じて信号機を自動で切替えて救急車の到着時間を早めた、蓄積されたデータを元に渋滞要因を分析して、新たに信号機や右折・左折レーンを設置し通過時間を早めた、という効果が報告されています。

まとめ

スマートシティが実現できれば、これまで以上に便利かつ、安全で安心の生活空間を実現できるようになります。
エネルギーの効率的な利用や、防災、防犯はもちろん、渋滞の緩和など、現状で課題とされていることを解決してくれるはずです。
また、AIやカメラ、センサなどを設置して、さまざまなデータを収集できることで、新規のビジネス創出、地域活性化などにもつながってくるでしょう。
実際、日本国内はもちろん海外でもあらゆるスマートシティのプロジェクトが推進されています。今回取り上げた事例以外でも、次々に新たな取り組みがスタートしています。
テクノロジーの進化に合わせて、スマートシティの実現までのスピードも変わってくることを考えると、引き続き注視したい分野といえます。

まとめ

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